政倫審によって明らかにされたのは、政治家は責任の取り方を知らないということと、政治家ほど、公然と納税拒否を表明する人々は、この日本にはいないのではないかということ。政治家というよりも自民党議員というべきかもしれませんが、巨額のカネを手にしても彼らは課税なしは当然だと開き直っています。(なお、アイキャッチ画像の背景画像はCopilotで作成しました。二階俊博氏の画像の出典は自民・二階俊博氏、3年間で書籍代3500万円の不思議「家1軒分」「読書家ぶりに驚き」産経新聞。茂木幹事長の画像の出典は、茂木幹事長ら10年で億単位を「資金移動」 公開基準甘い団体に朝日新聞。他の画像は出典明示済み。)
1.銭ゲバ議員を育成する法的仕組み
自民党議員たちの身勝手な反発で開催そのものが危ぶまれていた政治倫理審査会は、岸田総理の突然の出席表明でともかくも開催されました。
しかし岸田総理や二階派の武田良太議員、安倍派から出席した松野、塩谷、西村、高木議員の4人全員の弁明は、都合のいい法解釈の披瀝と知らぬ存ぜずのオンパレードに終始し、銭ゲバ議員たちの厚顔無恥ぶりと浅ましさを改めて浮上させたという効果以外には、ほとんど意味のない時間の浪費に終わったように思われます。
確定申告ならアウト確定…政治家がカネの出入りを「不明」と訂正しても許される特別な事情 2024年2月17日 東京新聞
一部立民議員(確か寺田学議員の塩谷氏へ)の迫真的な追求はあったものの、自民党を覆い尽くしている銭ゲバ体質を揺るがすにはほど遠いのが実情です。
その根本的な理由は、現行法では、銭ゲバ議員たちに様々な逃げ道を提供しているからだと断言します。政治団体を介すれば、議員たちは、政治活動費という名目で、課税されない事実上使途不明OKの資金を,いくらでも集金、蓄財することが事実上可能になっています。税金が原資の政党助成金でも同じです。
しかも政治家は政治団体を複数もつこともOK。さらにはつい最近暴露された茂木幹事長のように、後援会を使えば規制はさらに緩くなり、不透明な巨額な蓄財も可能になっています。
抜け穴だらけの政治資金規正法については今回の裏金事件で初めて知ったのですが、複雑で細かい条件を様々設定して政治家に言い逃れ、不正摘発逃れを与えるための法律の色合いが非常に強い。
この複雑な現行法をもっとすっきりと明確な基準に変えれば、言い逃れもできなくなり、最強の不正防止策になるはずです。
政治資金も一応記帳の義務はあるようですが、人件費や光熱費などの固定費は記帳不要、その他の政治団体では、5万円未満は明細記帳は不要など経理の意義を否定する仕組みになっています。こんな例外規定があると、かえって経理処理にとっては障害でしかないと思われますが、49,999円を10回重ねると約50万円、100回で約500万円が明細不明で無税扱いでの不正蓄財も可能となります。固定費をごまかせば、もっと巨額の無税蓄財も可能。ふざけているとしか思えません。
これらの不正防止のためには、派閥を廃止すべきだとの指摘もありますが、派閥廃止だけでカネをめぐる政治家の不正がなくなるとは思えません。派閥に属さず、派閥解消すら主張している小泉進次郎議員は、裏金問題沸騰渦中に、堂々の政治資金パーティ開催で大金の寄付をゲットしています。
パーティで集めた大金は、政治家個人が直接受領した場合は違法ですが、政治団体を介すれば、ユルユルの活動資金報告の必要はあるものの、政治活動資金として無税特権を付与されています。小泉議員もその特権をフル活用しているわけです。
岸田派や安倍派、二階派は派閥廃止を決定しましたが、事実上の寄付集金組織である政治家の政治団体の廃止、禁止は話題にもならず、廃止の実行例も皆無です。
岸田総理は、野田元総理の追求を受けて、総理在任中は、政治資金パーティは開かないことを約束させられましたが、総理を辞めると、当然のことながらパーティ再開でしょう。
今回の裏金問題で国民の怒りを買った最大の要因は、自民党の議員たちが巨額の資金を手にしていながら、政治を看板にしただけで脱税が公認されているという、全く合理的根拠のない政治家特権がまかり通っている異常な状況によるものです。
政倫審で、立民の寺田議員から、使途不明の裏金に対して納税すべきではないかと問われた塩谷議員は、一瞬のためらいもなく、納税するつもりはないと異様なほど強い口調できっぱりと答えていました。わたしは、その余りにも露骨な納税拒否の表明には、心底驚かされました。政治家には、無税特権は当然だとの思いがしみこんでいる様子がありあり。
また、西村議員は経産大臣在任中に、政治資金パーティとは名ばかりの、自分の部下である経産省の官僚を10人出席させた会合を開き、大金をゲットしたという。外部に売りさばいた大量のパーティ券購入者は会合には出席せず、代わりに官僚10人を出席させたらしい。
公私混同も甚だしいですが、西村氏にはその認識は皆無のよう。西村氏をはじめ自民党議員にとっては、私的利益のために公を利用するということは、ごく日常的な政治家特権となっているということなのでしょう。
岸田総理は、総理就任祝いパーティでも不正が疑われる寄付を受けています。
【全文公開】岸田文雄首相に322万円「違法パーティー」疑惑 「総理就任を祝う会」で多額の会費を集めながら報告なし、主催は“ダミー団体”…信じがたい事実が次々判明 2024.01.22 週刊ポスト
さらに驚愕するのは、二階俊博元幹事長は、幹事長在任5年間で50億円もの政治活動費が支給されていただけではなく、ほぼ全額が使途不明だという。
自民・二階俊博氏に支給、政策活動費50億円が使途不明、原資は税金…政党交付金か 文=Business Journal編集部 2024.03.01
この異様な事態は、政治活動費と名がつけば、事実上使途不明OKだとする、現行の政治資金規正法に由来します。一部明らかになった支出の中に、書籍代として3千数百万円もの金額が計上されたことが話題になっています。
二階氏の書籍代3500万円はどれだけ規格外?公立図書館4館、小学校図書室75校分に相当…明かしていた定価1500円の“座右の書”は 女性自身 2024/2/9
公立図書館1館当たりの予算が823万円だという日本で、ありえぬ超巨額な書籍代ですが、こんな大ウソが罰せられることもなく堂々とまかり通ることを可能にしているのは、政治資金規正法が象徴するような、政治活動と名がつけば、違法が違法とはならない政治家特権容認体制です。
この特権体制や特権意識は派閥を廃止したぐらいではなくなりませんね。一般国民並みに収入と支出の透明化を図る以外に、この特権崩しは不可能だと思います。
・政治資金パーティも寄付も全く同じ扱いにして、受領した資金は全て収入として記帳する。 ・資金提供者の名前は全員公開すべきだとは思うものの、党派性を公にすることへの抵抗感を考えると、即断は難しい。 ・複数の政治団体は認めない。後援会も政治団体も、収支は全て1円まで記帳し、残余金(収益)が出た場合は納税する。 ・固定費も流動費も経費は全て1円単位まで記帳する。一般国民はすべてこの基準で経理処理をしています。 ・その他、政治家にのみ限定された特権的配慮はすべて解除し、一般国民と全く同基準の規定を適用する。
・政治資金収支報告書はオンライン提出を義務化し、オンライン以外は受け付けないことを徹底する。(3/10) ・国会議員も地方議員もすべて公僕であることを片時も忘れずに、法改正に取り組み政治を行うこと。
岸田政権は、裏金問題に対する厳しい批判の声を受けて改革案を策定し始めているようですが、逃げ道だらけの現行の複雑怪奇な政治資金規正法を、逃げ道など発生しえないような、もっと簡素で分かりやすい法律に変えるべきです。
上記列記した項目は、改革案作成の参考になると思います。
なお、政倫審に関しては、政治家特権に簡単なコメントを追記しております。確定申告の作業中でしたので長文での論評はできませんでしたが、一言コメントを書き加えました。自民党議員の感覚は一般国民からすると、同じ日本国民とは思えないほどに異常です。
*3/15 政治活動費は、領収書付きで1円まで記載する決まりになっているらしい。ということは、裏金以外は、基本的には全議員はこのルールを遵守しているということなんでしょうか。しかし、以下のような蓄財やグルメ三昧が可能な状況からしても、あるいは、政治家は無税特権は当然だという自民党議員の開き直り態度からしても、政治資金活動費に対する経理処理に対して、一般国民並の経理処理が義務づけられているとは思われません。
政治資金は1円まで記載していることを繰り返し強調していた、破廉恥パーティ開催主催者の陰の親玉、世耕氏の政倫審を聞いて一言追記。
自民党の茂木幹事長が「公費でドスケベパーティー」を叱責できぬワケ。裏金・会食・接待文化、パリピ自民の本性あらわ 2024.03.15 by 新恭 MAG2
自民・松野前官房長官の「裏金グルメ天国」国民には地獄?食いすぎ飲みすぎ嘘つき国会議員“脱税メシ”の呆れた実態 2024.03.08 by 新恭 MAG2
恥ずかしくないのか!自分で飲み食いする費用ぐらい、一般国民同様、自分で払え! *3/15
2.岸田総理の評価をめぐって
岸田内閣の支持率は下降の一途を辿っており、岸田総理の指導力のなさにも厳しい批判が噴出していますが、わたしは、岸田政権になって様々な問題が噴出し続けてている点にこそ、岸田政権存続の唯一の根拠があると思っています。
統一協会問題も含めて、現下の裏金問題も、安倍政権下ではもとより、管政権下でも、表に出ることはありえませんでした。仮に何らかの形で表面化したとしても、官邸の圧が強かっただけに、現在とはもっと違った様相を呈していただろうと推測しています。官邸の圧とは、官邸の圧力、総理の「指導力」の強さとも言い換えることも可能です。
もちろん、これは岸田政権を支持しているという意味ではなく、ここ近年の政治情勢の動きとして認知している変化にすぎませんが、岸田政権下では、統一協会に解散命令を出しただけではなく、不動産の処分や財産隠しなどを抑止(禁止ではない)する対象となる「特定宗教法人」にも指定されました。これは注目すべき動きだろうと思います。
統一協会にどう向き合うかは、岸田政権のみならず、日本の政治家全員に対して、国会議員の資格の有無を問う、第一の関門です。岸田総理は、この第一の関門を確実に突破することによって、自らの指導力を証明する以外には道は残されていないはずです。
ただ、最近偶々聞いた国会審議の中で、看過できない岸田総理の言い逃れ(ウソ)発言があり、これについても一言。誰だったか、立民の女性議員が、子ども子育て支援の財源を社会保険から徴収するという政府方針に関して、負担する国民への徴収額が、政府発表の額と実態とが余りにもかけ離れている点を問いただしていました。
言うまでもなく、実際の徴収額がはるかに大きいとのこと。この質問に対して岸田総理は、政府発表の額は、実際の保険金を支払う被保険者の数を基礎にしたものではなく、その保険を使う人全員の数をベースにしたものだと、いささかのためらいもなく、堂々と答えていたことにはかなりの衝撃を受けました。
妻子などの扶養家族も含む利用者全数で割った金額を示し、国民1人あたりの負担額はさほど増えないとの、余りにも露骨な詐欺的手法を、国会で全く恥ずかしげもなく堂々と答弁している岸田総理には、総理大臣の資格はもとより、政治家としての資格もないと言わざるをえません。
異次元の子ども子育て支援という大風呂敷を広げながら、子ども子育て世代に大きな負担を強いる、社会保険に上乗せという姑息な収奪システムを導入した上に、負担額まで詐欺的算術を使って小額だとごまかすとは、あきれ果てて言葉もありません。
もっと、正直な政治を行うべきです。
*3/10追記 岸田総理は裏金問題をめぐる国会審議の中で、オンライン提出の体制作りを進めるために、関係部署に指示を出したと発言していましたが、政治家特権でご報告したように、システムはすでに11年も前に2億4033万5,550円を投じて構築されており、運用保守費用として、毎年6000万円近い公費が投じられているのですよ。
岸田総理はこのシステムを使っておられないどころか、すでに稼働して11年も経っていることもご存知ないらしい。というよりも、システムがあるにもかかわらず、ご自身も含めてほとんどの議員がオンライン提出をしていなという不都合な事実をごまかすために、わざと知らないふりをしているとしか思えません。
オンライン提出システムの死蔵も、政治家としての究極の目的は、我が懐を肥やすためのカネ集めだという、銭ゲバ議員の本音を象徴しています。政治資金パーティを禁止しても、銭ゲバ政治家たちの銭ゲバ度は、ほとんど低下しないはずです。であれば、おカネの流れをすっきりと透明化する仕組みを作る方が、有効なのではないかと思います。
つい先ほど、自民党青年局が開いた懇親会での、セミヌードダンサーを招いての乱痴気パーティの破廉恥騒動の報道あり。余りのことに、言葉を失いました。われわれ国民の政治に対する絶望感は深まるばかりです。*3/10追記