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菅総理と森会長

「葦の葉ブログ2nd」より転載

菅総理と森会長、目下、大物議をかもしているこのお二人は現在の日本を象徴するような人物だと思います。森会長は女性蔑視発言で国内外からの大ブーイングを浴びていますが、森氏の発言は、女性蔑視にとどまらない、日本が抱える根深い宿痾をも晒け出したものです。本号ではこのお二人に焦点を当てつつ、コロナも含めて、目下の日本が抱える諸々の問題の所在を明らかにしたいと思います。

1. 菅総理の共助と公助

先週の国会では、菅総理のご長男の件についても取り上げられていましたが、菅総理は我関せずとばかり、完全に他人事のような答弁に終始していました。菅総理にとっては、息子とは別人格であるというのが、我関せずの最大の根拠になっていますが、人格は別であっても、ご子息が父親である菅総理の政治的立場を利用しているとう事実は誰にも否定のできない厳然たる事実ではありませんか。

わたしはこの国会審議での、菅総理の余りの無責任な答弁に憤りを覚えて、ブログの更新を待てずに2/5、twitterとFacebookに<菅総理のご長男の件、総理はまるで他人事のような答弁の繰り返し。今日の国会答弁でも全く同じですね。総理は国民には「自助・共助(身内などの援助)・公助(公的な支援)」を繰り返し訴えておられますが、ご子息は自助はなく、「共助(父親)=公助(総務省の高級幹部)」に全面依存。許されるのですか?>と投稿しました。

総理ご自身が直接総務省の幹部に対して口利きしたか否かについては、総務省内部の聞き取り調査だけではおそらく明らかにはならないはずです。国会審議でもわたしが聞いた範囲では、総理自身が口利きしたか否かを問うやりとりはなかったように思います。この接待事件は、時期としては菅総理が総理に就任する前の官房長官時代ですが、菅氏は人事権を一手に握って官僚たちをおそれさせていましたので、総理に匹敵するか、時にはそれをもしのぐ力をお持ちでした。

立憲民主党の議員(名前は失念)は、まさかそこまではありえないと思ったからか、総理が直接関与したか否かについては問うていませんでしたが、報道は事実なのかどうか、また総理は、この報道を受けてご子息とどんな話をされたのかを問いただしていました。

総理は事実かどうかについては全く答えず、ご子息には聞き取りには答えるようにと電話で話されたと答弁していました。聞き取りとは総務省による内部調査ですが、菅総理は別の質疑応答でもこの問題は総務省の聞き取りに任せているとの趣旨の発言を繰り返しています。しかしこの聞き取りで、総務省の高級幹部が、菅総理のご子息とその勤め先である東北新社の社長との接待を受けたことが正式に認定されたとしても、罰を受けるのは官僚だけのはず。菅総理は官僚だけが責任を負えばいいとお考えなのでしょうか。

立民だったか他の野党議員だったか、野党からの、本件のような事例は年間どれぐらいあるかの問いに対して、総務省は年単位では答えず、ここ5年の間に6件だったか、7件だったかの数字を答えていました。年単位に換算すると約1件という数字でした。非常に稀な例だということです。この6,7件の大半も、菅総理のご子息絡みであった可能性もゼロではないのではないか。昨日(2/8)の国会では総務省の秋本局長が再度答弁に立ち、菅総理のご長男との接待会食は年1回ぐらいであったと、従来の答弁に若干修正を加えたとNHKラジオニュースが伝えていました。

年1回ぐらいということは、今回発覚した接待以外にも複数回あったということです。ご長男と総務省の幹部とがなぜそれほど親密な関係にあったのか、国会はその背後事情を明らかにする責任があると思います。このご長男の動きを父親である菅総理が全く知らなかったとは、とても信じられません。

菅総理がご自身の政治的立場を私的に利用することをほんとうに峻拒されているのであれば、当然、お子さんたちが父親の政治力を利用することも厳しく禁じておられるはずです。しかし報道後のご子息とのやりとりでは、「オレ(or お父さん)に無断でこんなことしたのか!」とか「オレの顔に泥を塗った!」、などと叱責しなかったのは自ら告白されているように紛れもない事実です。

また菅総理によると、総務大臣の時代にご子息が菅大臣の秘書を務めていたのは十数前のことで、今回の件は自分には関係はないとも答えていました。しかし総務省も、十数年前と最近とでは人事も含めて内部の様子もかなり変わっているはずです。にもかかわらず民間人である菅総理のご子息が、総務省の窓口担当の官僚ではなく、高級幹部官僚と即コンタクトを取れたばかりか、接待にも応じてくれたという、他には類例のないほどの特例的な対応を受けることができたのはなぜか。非常に大きな疑問が残ります。

国会で野党議員になぜかと問われた総務省の幹部は、調査中で答えられないと答弁していましたが、内部調査ですよ。この問いに答えることのできる総務省の最高幹部を国会に呼んで、この疑問を明らかにすべきだと思います。官僚では埒が明かなければ、ご長男も国会に参考人招致して事情を問いただすべきではないでしょうか。

昔から贈収賄事件は絶えることなく発生していますが、最近では類似事件が日常茶飯事化している感があります。公私の別が曖昧であることが、贈収賄事件の根底にあるはずです。政治家は政治活動も私的な生活も公のお金=税金で賄っていますし、政治家が手掛ける様々な事業も全て税金が資金です。

この単純明白な事実を認識するならば、その立場を私的な利権、私的な利得を得るために利用しようという気持ちは起こらないはずですが、事実はさにあらず。全く逆の動きが強化されているとさえ思われます。目下、日本の置かれている厳しい現実を直視するならば、政治を私的に利用しようというような余裕もヒマもないはずです。

民間企業では自ら稼いだお金でも、経営トップといえども私的に流用することは許されません。今も進行中の日産のカルロス・ゴーン元会長の公私混同事件は、その典型例です。生活の全て、活動の全てが税金に依拠している政治家の皆さんには、民間企業以上に公私の別が厳しく求められるはずですが、近年では、公私混同がごく普通の風景になりつつあるのではないかと危惧せずにはおられません。

2. 森会長と異論排除

日本オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長の女性蔑視発言。思わず森氏の本音が出たのでしょうが、この発言は国内外から激しい批判を浴びるほどの女性蔑視、女性をバカにしたような本音丸出しの発言です。しかしこの発言の背後には、単に女性蔑視にはとどまらない、異論を排除するという日本の個人、法人、団体、組織のみならずメディアまでをも覆う、根深い構造的な宿痾(シュクア=病)が潜んでいると考えるべきだと思います。

コロナ対応では、政治主導という名のもとに、専門家ではない政治家が非常に不透明な形で全てを仕切ってきました。当然、コロナに関する情報も国民にはごく一部しか開示されないという状況が続いてきましたが、それどころか、専門家にすらほとんど開示されていないという異常事態にまでなっています。

この異常さについては、本ブログでも何度か取り上げてきましたが、政府が設置したコロナ対策専門家会議の尾身会長にすらそれらの情報が開示されないという不可解さも、前々号コロナ拡大と日本の病院事情の最下段部で紹介しました。尾身会長のこの発言も、少し前まではとても公の場ではなされなかったはずです。

政府のコロナ対応のお粗末さに国民の批判の声が高まり、政権による独裁的な采配では収まりがつかなくなったという事情が、ほんの少しとはいえ、風の通る隙間を生み出しているというのが最近の状況ではないかと思います。しかし自由な発言は許さないという政府(安倍政権⇒菅政権)の基本的な姿勢は変わってはいません。

「8割おじさん」こと西浦京大教授への次のインタビュー記事には、なぜコロナ情報が国民のみならず、専門家にすら開示されないのか、その大疑問に対する答えが語られています。 菅政権が「コロナ第3波」の対応に遅れたワケ 東洋経済オンライン 2021/02/06

都合のいい分析結果が切り取られている 政府の科学的なエビデンスに対する姿勢の問題もある。本来、科学的な分析はたくさんのやり方で複数の人にやってもらい、それらをテーブルの上に並べ、十分に検討したうえで政策を決めていくというプロセスが理想だ。しかし、今は密室で1つか2つしか分析が行われていない状態だ。よりオープンなサイエンスの声が届く仕組みにはなっていない。 加えて、官邸の意向を踏まえた動きがあるため、現在進行中の政策に不都合な事実は切り捨てられる傾向がある。その一方で、都合がいいものであれば質が限定的でも積極的にそれが使われていく。 菅政権が「コロナ第3波」の対応に遅れたワケ 東洋経済オンライン)

専門家に政策の適否を検討してもらうために政府が設置する数多くの「○○委員会」は、政府の政策をゼロから自由に検討する場ではなく、政府の政策にお墨付きを与える場になっていることは世間周知の事実ですが、なぜそのように国民の目には映るのか。政府の政策立案には邪魔になるような意見は排除されるような仕組みになっているということです。

コロナという未知のウイルス、国民の命に直結する問題を検討する専門家会議でも、この仕組み下に置かれていたとは驚愕の一語です。しかも二重に異論排除の仕組みが施されていたわけです。専門家会議に出す資料そのものを事前に選別して1,2しか出さないとは、想像を絶する言論(議論)統制です。

資料が1,2に選別された段階で、専門家会議の結論はほぼ政府の意向に沿った内容に誘導されざるをえないという仕組みになっていたわけです。これほど科学的知を踏みにじる政権は過去にあったのでしょうか。おそらくここまで無知蒙昧に恥ずかしげもなく権力を振った政権は、安倍政権と菅政権以外にはなかったのではないかと思います。その功績は認めつつも、全能感ゆえに公私混同も当然の権利だと錯覚するに至っているわけです。

しかし問題は異論を排除する仕組みだけではありません。仕組みや制度と不可分のものとはいえ、目には見えない空気のような形で存在する言論抑圧力こそが、仕組み以上に我々を強く縛っていることにも目を向けるべきだと思います。

西浦教授は、上記インタビュー記事では政府の問題点も明確に指摘しておられますが、政府の設置した委員会では、発言するにも勇気がいることを次のように吐露しておられます。

 私は、厚労省の会議において航空機を利用した人の移動率と2次感染者数の相関が限られているとする紙1枚だけの資料を内閣官房が出したとき、勇気を出して「ここだけを切り取るような話ではない。もっと広くみんなで議論すべき研究課題だ」とコメントした。現に同じデータを使って再検討した結果、移動率は実効再生産数との間で時系列相関があった。 研究者としての良心から申し上げるが、これは科学との距離感にとどまらず、日本という国の政治を考えるうえで相当にシリアスな問題だと認識している。今の政権のあり方だと変わらないのだろう。 菅政権が「コロナ第3波」の対応に遅れたワケ 東洋経済オンライン)

西浦教授は世間的には名の知れた有名人的な専門家ですが、その西浦教授ですら発言するのに勇気がいるとは、政府の設置する委員会がいかほどの圧力下で運営されているか、想像に難くありませんが、さらに驚くような事実も明らかになっています。

2月7日の西日本新聞に「慣例を廃止、現実直視を」と題する、精神科医でノンフィクション作家の野田正彰氏の長文のエッセーが掲載されていました。

前半部には、コロナ感染が拡大し始めた昨年の2月,3月頃の政府の全くの無策ぶりが紹介されています。保健所は政府からコロナ対応を全面的に一任されましたが、当然のこととはいえ、職員たちはコロナに関する知識は皆無。保健所は、本来ならば感染症が発生したならば医療機関などに関連情報や対応策を即座に発すべきですが、コロナに関しては医療機関には全く何も伝えられなかったという。保健所も何も知らないわけですから当然の結果です。

政府(安倍政権)は、半減した保健所では何もできないということを承知しながら、コロナ対応を保健所に全面委任する対応を取り続けてきました。間もなく専門家会議は設置されたものの、専門家会議のトップを務めてきた尾身会長や国立感染症研究所の脇田所長も、コロナという新しい感染症に対応できる専門家ではないという。

尾身氏は長く厚労省の医務官僚を務めてきて、現在は地域医療機能推進機構理事長、つまり尾身氏は厚労省(=政府)にとっては身内同然の人だったわけです。脇田氏は感染症でもC型肝炎ウイルス研究の専門家だという。この人事一つとっても、政府の専門家排除姿勢が初期段階から一貫していることが分かります。

野田氏によれば他にも非専門家が専門家会議の委員になっているとのことですが、野田氏のいうこれら「政府御用達委員」の中からも政府の情報隠蔽が批判されるほどに、安倍・菅政権の情報隠蔽は異常であったということです。「政府御用達委員会」を介して、政策決定過程の「非政治性が偽装」される体制を、野田氏は「慣例」踏襲だと批判されているわけです。

コロナでも政府のボロが外に漏れないようにこの「慣例」が踏襲されたわけですが、単に政府のボロ隠しのためだけであったのか。その結果の余りの重大さからすると、何か別の狙いもあったのではないかとの、新たな疑問も湧いてきますが、これは後の宿題といたします。

野田氏は「真の専門家」についても詳細に言及しておられますが、一言でいうならば、現場で実際にコロナ患者の治療にあたった呼吸器専門医や公衆衛生学者やウイルス学者が専門家として発言すべきであり、これらの専門家たちが互いに連携して、いかにして治療やワクチン開発を進めていくかを議論し、政府や市民はそれら専門家を支えていく体制を構築することこそが求められていたはずだと訴えておられます。

野田氏は最後に、「日本には優れたウイルス学者や免疫学者がいるのに、なぜいち早くウイルスワクチン製造に取り組めなかったのか。コロナ感染者への医療対応をなぜ全国の臨床医に十分伝えることができなかったのか。」との疑問を投げかけておられます。

これは政府のサボタージュにほかなりませんが、おそらく政府は意図的にこのサボタージュ策を実行をしたのではないかと思われます。なぜ政府は国民の命を犠牲にしてまでこのサボタージュ策を実行したのか。この問題は非常に難問ですので別のテーマとして取り上げたいと思いますが、明らかなことは、政府によるこのサボタージュ策は、異論を許さぬ強力な異論排除体制なしには実行できなかったということです。

そしてこの異論排除の圧力は政府機関のみならず、日本の社会を広く覆っています。マスコミも例外ではありません。

3. ボナックとコロナ創薬

ところで昨年12月22日に発信しました コロナとポストゲノム創薬「2福岡県が支援した世界初のコロナ治療薬」(2020-12-22)でご紹介しましたボナックについて、その後もニュースは皆無です。ワクチンは米英中露などでいくつも開発されていますが、コロナ治療薬は世界初のはず。治療薬としてはエボラ薬やアビガンなどの既存薬が使われてはきましたが、コロナに直対応した治療薬が開発されたとのニュースは皆無です。

世界初のコロナ治療薬となると大ニュースになっても当然ですが、ニュースも皆無。気になってGoogle Chromeで「ボナック」検索をしたのですが、何やらゲームキャラのような画像ばかりが出てきて、製薬会社のボナックはどこにも見当たりません。

やむなく「創薬 ボナック」で検索したところ、やはりボナックそのものはどこにも見当たらず、出てくるのは製薬企業の紹介サイトのみ。検索ページもその紹介サイトを掲載したたったの1ページしか出てきません。何か不吉な予感がして紹介サイトを調べると、多数社名が並んでいましたが、下の方にやっとボナックの名前が見つかりました。

幸いボナックの社名にはリンクがありましたので、そのリンクでやっとボナックのHPに辿りつくことができました。コロナとポストゲノム創薬では、ボナックのHPはご紹介していなかったので、以下にリンクを貼っておりますが、新型コロナ治療薬の現況については、目下のところ不明です。同社の創薬に関するお知らせも、以下のように昨年8月26日以降は更新されていません。

ボナックhttp://www.bonac.com/ 新型コロナに関する最新情報 2020-8-26 福岡県知事が定例記者会見で、ボナックの新型コロナ治療薬開発の進捗状況について報告 2020-8-25 新型コロナウイルス感染症治療薬の研究開発について進捗状況の報告

株式会社 ボナック本社・〒839-0861 福岡県久留米市合川町1488-4 福岡バイオファクトリー TEL: 0942-32-6700 FAX: 0942-32-4611 福岡支社・東京支店もあり。

Chromeでボナックが検索にも出てこないことに驚き、ボナック関連の情報をお伝えしたく、上記のようにURLなどを記載しました。ところが、試しにMSEdgeで検索するとボナック関連のリンクが多数出てきました。この世からボナックの名前が消されたわけではなかったのでホッとしましたが、まさかGoogle検索のみ、ボナックが排除されていたとは、信じられない思いです。

これまでもIn Deepやわたし自身の体験も交えてGoogle検索では、一部では検索制限があると指摘してきましたが、ボナックのように全く非政治的な製薬企業にも検索制限がなされていたとは、驚愕の一語です。Google本社はこうした事実は把握しているのでしょうか。

しかし地元の西日本新聞も、この地元のバイオベンチャーの仕事を紹介していません。ボナックに関する情報を遮断しているとも言えるわけです。西日本新聞だけではなく他紙や他のマスコミも同様なのでしょうか。NHKラジオでも紹介していませんでしたね。

しかしEdgeの検索で、昨年5月には日経新聞も以下の記事でボナックを紹介していたことを知りました。日経の記事は共同通信の配信記事です。当然、西日本新聞にも配信されているわけですが、地元のニュースを配信を基に書くというのも怠惰の極みですが、自前記事も書いていないのはさらに不可解です。

新型コロナ治療薬、ボナック 福岡県と共同研究 日経新聞 2020-5-18 福岡県とボナックがタッグを組んで、コロナウイルスとの戦いに挑む Forbes JAPAN   2020/10/30

ただ、メディアの取材も程度ものだと思います。創薬に関する取材を5回も6回も、あるいはもっと多連載記事にするほどに長時間にわたって取材された場合、研究開発に関わる重要な情報が盗み出される、あるいは外部に漏れるという危険性は増大しますので、研究室や研究の現場をメディアに無防備に開示するのは避けるべきでしょうね。

以前ご紹介した長崎大の安田二郎教授の研究室探訪の連載記事(安田二郎教授 研究室に行ってみた)も、われわれ素人にも分かりやすくウィルス研究の現状を伝えてくれていましたが、読みながら研究情報が外部に漏れたりしないのかちょっと心配になりました。記事になっているのは、おそらく専門家の間では広く知られた内容なのだろうと思いますが、記事になるのは取材内容のごく一部です。

似たような心配をさせられたのが、2年ほど前に西日本新聞で20数回(27回ぐらいだったか、20回をはるかに超えた数)超長期連載されていた、福岡県警の科捜研の現状を探る詳細極まる連載記事です。毎回大きな写真の入った、全紙の4分の一から5分の一くらいの大きな紙面を割いた記事でした。

我々一般人にはめったに目に触れることのない警察の仕事を紹介するのもメディアの意義ある仕事だとは思うものの、20数回もの連載記事になるほどに取材をしたならば、科捜研の犯罪捜査の手法はもとより、科学捜査に使う機器類などの詳細な情報に加え、各部署で科捜研の仕事に携わる専門家の名前や様々な情報なども取材者側に伝わります。

記事として公開されるのは、取材で収集した膨大な情報のごく一部です。取材用のカメラは肉眼以上に大量の情報を画像として収録するのはもとより、おそらくスマホカメラ以上の精度をもって、被写体および被写体の周辺情報も広く鮮明に記録するはずです。

これらの情報が外部に漏れないという保証はどこにもありません。外部に漏れた情報は犯罪者たちに流れると、捜査回避の作戦に使われるであろうことは言うまでもありません。また解析機器などの情報が、当該メーカー以外に伝わることもありえますし、優秀な人材の引き抜き作戦にも使われる可能性もゼロではありません。

わたしは西日本新聞がこれほ詳細に超長期にわたって科捜研記事を連載しつづけてきたことは余りにも異常であり、不気味さすら感じていました。いったいいかなる意図によるものだったのか、思い返しても不可解さは募るばかりです。メディアが社会正義の実践者であるという思い込みは危険です。

我ながら全く想定もしていなかった方向に記事が広がってしまいましたが、新聞社やマスコミが必ずしも公正な取材や記事を書くとは限らないとの思いからの脱線でした。

ここでボナックに戻って書き加えますが、実は、わたしはコロナとポストゲノム創薬では、ボナックはコロナ治療薬はフランスで治験中だと書いておりますが、これは大きな間違いでした。先にご紹介しましたボナックの昨年8月に公開したお知らせ(新型コロナウイルス感染症治療薬の研究開発について進捗状況の報告)によると、この段階では「細胞を用いた試験で検証した結果、新型コロナウイルスの増殖を顕著に抑制する効果が確認されました。今後速やかに非臨床試験を進め、来年度中には臨床試験を開始する予定です。」とのことですので、今年はどこかで治験をしているのかもしれませんが、治験に関する情報はありません。

また同社は昨年8月のお知らせで、長崎大学の熱帯医学研究所と東京医科大学とも提携して研究開発を推進していくことも報告しています。今年唯一掲示されている1月のお知らせには、イギリスの製薬大手グラクソ・スミスクライン株式会社の開発本部⾧、取締役副社⾧を務めた高橋稀人氏が同社の取締役に就任されたことが報告されています。

ボナックに関して間違った情報を書いていましたので、最後にその訂正記事を書くつもり書き始めたのですが、検索異常に遭遇したことで、訂正記事とはいえない長文になってしまいました。安倍・菅政権ともこの世界初のコロナ治療薬へのバックアップはしていません。もしも政府が支援を表明したならば、ニュースにもなるはずですが、その種のニュースは皆無です。福岡県が支援しているとはいえ、国を挙げて支援すべき研究ではないのでしょうか。

なお前号医療逼迫はなぜ解消されないのかの最後に「ヘッダー下の空白について、次号で説明します」と書いておりますが、実は掲載し始めたGoogle広告をめぐるちょっとした齟齬が原因でした。今では空白は埋まっています。Google批判ばかりしていると広告にも悪影響が出るかもしれませんが、いつかGoogleのみならずネット広告全般についても論評したいと思っています。