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中国のハイテク技術

「葦の葉ブログ2nd」より転載

新年初の更新です。明けましておめでとうございます。

先日、ネット検索中に偶々目に入ったのですが、驚くべき記事を見つけました。「日経BP」の 中国企業がイスラエルに殺到、出遅れる日本 という記事ですが、中国とイスラエルとの関係が急速に緊密化しつつあるという。かなり昔の記事かと思ったのですが、昨年12月21日の記事です。なぜか、この記事ではトランプ大統領の対中制裁については全く触れられていませんが、両者の緊密化についてトランプ大統領が知らないということはありうるでしょうか。当然のことながら知っているけれど、「イスラエル命」のトランプ大統領ゆえ、イスラエルだけは何をしても黙認しているのかもしれません。

実は両国の緊密化はかなり前、2011年から始まったそうですが、2016年以降急激に強化され、中国企業がイスラエルに殺到しているという。のみならず、世界トップクラスのイスラエル工科大学(テクニオン)と中国との連携も強化され、2017年12月、テクニオンは「工学や生命科学の研究機関を置くキャンパスを広東省・汕頭に開設した」という。しかも驚くべきことには、この中国テクニオンの副学長は、ノーベル賞を受賞したテクニオンの教授が就任、教授陣の60%もテクニオンから派遣されるイスラエル人だという。つまりイスラエルは、中国とは他に例のない高度なレベルでの提携を推進しているということです。

中国にとっては、世界トップレベルのイスラエルの技術を入手できる一方、人口900万人という、人口規模でいうならば超小国であるイスラエルにとっては、高度な技術はあっても自ら商用化する基盤の弱いその弱点も、中国の潤沢な資金と巨大市場が解消してくれます。双方にとって願ってもない「相思相愛」の相手です。因みにファーウェイは、イスラエルに2カ所も研究開発センターを設置しているという。

ファーウェイも含めて中国企業の近年の急激な技術力のパワーアップは、潜在的に持っていた中国人の能力の高さが前提にあったとはいえ、イスラエルによる技術支援も大いに貢献したのではないか。いくら世界的に著名な優秀な学者を招いても、教えを受ける側にその教えを理解し、吸収する能力が不足していては、授業そのものが成り立ちません。ましてやその成果など望むべくもありません。

韓国では、アメリカの大学からノーベル経済学賞を受賞した著名な経済学者を、億単位の報酬を払って招きソウル大で特別授業を開始しましたが、アメリカ人教授は任期半ばで、理由も告げずに帰国してしまいました。当然、特別授業も廃止。この超異例の顛末は、おそらく授業そのものが成立しない、学生がほとんど理解できていないという事情によるものではないかと思われます。それ以外には考えられないような超異例さです。

ハイテク分野での中国の躍進がアメリカに脅威を感じさせるほどであることは、日本でもファーウェイ事件以降は、やっと報道されるようになりました。トランプ政権は、その中国の高度な技術はアメリカから盗んだものと非難しつづけていますが、盗みも含まれるとは思われるものの、その大半は、イスラエルから技術移転されたものだというのが真相ではないのでしょうか。

アメリカが有する高度な技術のほとんどはイスラエルも有しているわけですから、中国のハイテク技術がアメリカ並みに高度化しても不思議ではなく、むしろ当然の結果だと思われます。トランプ大統領は、日本やEUに対しては中国排除を厳しく要求する一方、中国と超異例なまでの緊密化を進め、中国の科学技術の高度化を支援しているイスラエルをなぜ非難しないのでしょうか。

ただハイテク分野での中国の躍進は、イスラエルの支援だけではないことも確かなようです。昨年12月初めに発表された アジア太平洋の企業成長率ランキング500社、上位は中国企業が独占 を見ると、上位を中国企業が独占しています。10位のうち、上位7社が中国(6位と7位の2社がインド、10位でニュージーランドが1社)、しかも「事業領域別では、中国はクリーンテクノロジー以外のすべてにおいて1位にランクイン」しているという。

日本は最高位が15位で、合計41社がランクイン。台湾は中国の勢いに押されて10位内を逃し、全体の数も減少したものの91社がランクイン。これは、シリコンバレーに拠点を置く デロイトトーマツ が発表したものですが、全ランキングは The Technology Fast 500 Asia Pacific をご覧ください。ここでも韓国の影は非常に薄い。

このランキングの大半を中国勢が占めているということは、中国のハイテク分野での伸長が、イスラエルの支援だけに依存した結果ではないことは明らかです。最先端分野では、イスラエルの支援が直接影響していると思われますが、広範囲にわたるハイテク分野での伸長は、中国の地力であると見るべきでしょう。

この地力は、中国ではかなり前から、小学校からITのプログラミング教育が導入されていることと密接に関連しているはずです。プログラミングができれば、いつでも、どこでも、またたった一人でも、新しい事業を始めることが可能だからです。今や世界的企業にまでなったアリババ(創業者は、昨年9月に、今年9月の退任宣言をしたジャック・マー会長=感動的な退任宣言もどうぞ。)も、始まりはマンションの一室からだったとのこと。アメリカのGAFAなどのIT企業の多くも、始まりは似たようなものだっと言われています。

そうした世界的企業の存在もさることながら、中国の最大の特性は、あらゆる業種でのIT化、AI化、特に生活圏に密接した分野でのIT化、AI化が、世界で最も広範囲に拡大している点にあると思われます。その代表例の一つが、キャッシュレス化が極度に進んでいることです。露店でもキャッシュレスだそうですが、日本では考えられません。現在日本では、政府がキャッシュレス化を進めようと躍起になっていますが、中国でのキャッシュレス化は中国政府ではなく、新興のIT企業によって実現されたという。これは、お名前を控えるのを忘れたのですが、中国在住のIT関連の仕事をしている日本人のレポートによるものです。

偽造紙幣が多いという事情もあり、金融に関しては中国国民の大半は、政府を信用していなかったという。そこでIT企業は、まず信用を得るための努力と、キャッシュレス化による恩恵が実感できるような様々な仕組みを導入し、瞬く間に中国全土にまで広まったという。その結果生まれたビッグデータを基に、AIによる与信審査も世界に先駆けて実施しています。露店での買い物までデータ化されているので、大規模融資だけではなく、小規模融資もAIで実施しているところが、日本や欧米などでは真似のできないところだろうと思われます。

シェア自転車は日本にも進出しており、よく知られていますが、中国では続々とハイテクベンチャーが登場しています。そうした中国でのスタートアップ事業の動向を紹介するサイト「36kr」が開設されたことが、昨年、日経新聞で紹介されていましたが、この36krのサイトを見ると、日本にはない猛烈な熱気を感じます。仮想通貨騒動で有名になったブロックチェーンですが、、日本では大手企業が送電や金融機関での活用を一部で進めている程度です。ところが中国では、ブロックチェーンを教育部門に導入し、学習評価に活用、その新商品まで開発されています。給食までAI化が進んでいます。その技術の具体的な活用は素人には分かりませんが、中国人の発想の柔軟さと、新しいことに果敢にアタックするチャレンジ精神には、改めて驚かされます。

中国人の旺盛なアタック精神は、日本とは比較にならないほどの厳しい競争社会を生き抜くための、いわば生存本能にも似たものかもしれないと素人解釈していますが、中国人は失敗を恐れないという、中国ウオッチャーの評も読んだことがあります。失敗を恐れてためらっている暇はないという環境も、この中国人気質を生み出したのもかもしれませんが、日本も戦後の一時期は多数の起業が生まれ、厳しい競争が展開されたという。新刊宮本一平著『炭都物語―イヌとハトと三池炭鉱(発売開始!)によれば、戦後日本には、自転車メーカーだけでも500社が誕生。厳しい競争が展開され、この競争を勝ち抜いたホンダやヤマハやミヤタなど数社のみが生き残ったという。

国の勃興期や時代の転換期にはどこでも似たような活気が生まれていると思われますが、現在の転換は、人類史上大画期をなすITやAIという新技術によってもたらされたものであることは、特に強調すべきだと思います。中国には政府による人材育成の結果、この新技術の活用力をもった人々がここかしこに存在しており、国家的ないしは世界的な大事業だけではなく、生活の細部にまでわたるこの技術の導入が、世界最速で進んでいるのではないかと思います。

当然のことながらこの新技術が持つ負の効果も、中国では世界最速で進んでいます。民間企業が蓄積したビッグデータは、全て中国政府に回収されていることは世界周知の事実です。ここが中国政府の怖いところですが、民間企業として世界的企業にまで成長し、巨大化したIT企業も、共産党の支配下に置かれる運命にあります。この特殊な体制が、トランプ大統領をはじめ欧米での警戒心を惹起しているわけですが、共産党による一党独裁体制を維持するためには、この膨大な情報データは中国政府の支配下に置くことは絶対条件になっています。今後の中国の大国化を支える新技術によって、中国政府はかつてない窮地にも追いやられるという、二律背反常態に置かれる結果にもなっています。

ただトランプ大統領の中国制裁の真意がどこにあるのかも、もっと見極める必要がありそうです。というのは、昨日だったか、一昨日だったか、トランプ大統領がAppleのティム・クック会長と会談して、iPhoneを米国内で製造するように要請したことが報じられていたからです。米国内で製造すれば、米中の労働者の賃金差から単純に計算しても、これまでと同様の収益を上げるためには、iPhoneの価格を数倍に上げざるをえないはず。もともとiPhoneは一社独占でかなり高額でしたので、数倍はもとより、収益減を承知で2倍ぐらいに押さえても、買う人は激減するはずです。アメリカではもとより、熱烈なiPhoneファンの多い日本でも販売は激減するはずです。この状態が続けば、Appleの経営危機は不可避となります。

トランプ大統領は表向きは、アメリカでの雇用増と技術の中国への流出を阻止するためと考えているのでしょうが、いずれも目的は達成されず、Appleを窮地に追いやるだけしかならないのは火を見るよりも明らかであり、子供にも分かる道理です。トランプ大統領も、Appleに求めた製造移転がもたらす結果を想定していはずはありません。まずスマホの技術は、特に最近になって、中国企業が高機能化された新製品を発表しており、iPhoneの技術を盗む段階をはるかに超えていますので、技術の流出阻止策など無意味になっています。この策の結果は、iPhoneの売上げ激減だけです。当然、米国内での雇用増にも貢献しません。

ただ、この政策の副次的な結果として、サムスンの売上げが一気に上がり、少なくとも米国内でのスマホ市場を独占することになるであろうことは、誰にでも容易に想像できます。当然、トランプ大統領も同様にその結果は承知しているはずです。中国スマホはすでにアメリカから排除されていますので、サムスンが売上げを伸ばしても不思議はありませんが、iPhoneの牙城を崩すのは簡単ではない。そこでトランプ大統領のご登場です。

という推測は荒唐無稽なものではなく、トランプ大統領の強力な支持母体であるキリスト教団体と韓国との緊密な関係からすれば、十分にありうる事態です。韓国はその工業化を、自ら技術力を高めて進めたことは一度もなく、全て政治的交渉によって日本から無償の技術支援を受けてなされてきたものでした。サムスンそのものも、その前身は日本の統治時代に誕生したもので、誕生から成長に至る全てを日本の無償援助に拠っています。普通は自社にない技術は大金を出して買うものですが、韓国では、日本から無償で譲渡されるのが当たり前になっています。当然、感謝もしませんし、そもそもこうした事実そのものも完全に隠蔽されて、あたかも自力で達成したかのような捏造宣伝が展開されています。

さらに日本企業から無償譲渡がなされない場合は、サムスンなどの大企業も含めて韓国企業はどこも、日本企業から無断で盗むということを何度も繰り返しています。サムスンはAppleからも盗んでいましたが、自ら苦労して技術力を高めようとはせずに、安易な手法で他国や他社の技術を入手するという姿勢が、韓国の技術レベルの向上を阻害する最大の要因になっています。大金をはたいて手にすれば、何とか時前で新技術、新製品を造り出したいという動機も生まれますが、譲渡にしろ盗みにしろ全てタダですから、そういう動機すら生まれない。

そこで政治力を使って、自国有利な環境を不正を厭わずに造り出そうというのが韓国の常套手段となっています。トランプ大統領が、韓国にもたらすであろう自らの政策の結果をどこまで自覚しているかどうかは分かりませんが、誰がどう考えても、アメリカには何一つ益をもたらさない要請をAppleにしたのは、サムスンの救済を狙ったものであることは、客観的な事実として否定はできません。

ファーウェイ副社長逮捕の報復として、元外交官だったらしいカナダ人2人が中国当局に逮捕されました。当初、彼らは北朝鮮支援に関わっていたと報道されていましたが、何と逮捕容疑は麻薬の密売だという。驚きの一語。この麻薬が中国国内で密造されたものであれば中国人も逮捕されたはずですが、そうしたニュースは皆無です。目下はカナダ人の逮捕が世界的な注目になっているので、カナダ人だけに焦点が当たっているのかもしれませんが、断片的な情報だけとはいえ、北朝鮮産の麻薬の密売の可能性もゼロではありません。

とするならば、かつてはさかんに報じられていた北朝鮮の麻薬密造、密売が今の正恩体制下でも行われていることになりますが、最近は全く報道されないのはなぜなのか。もう止めているから報道されないのか、続いているが報道されないだけなのか。カナダ人が関与した麻薬はどこで密造されたものなのか。中国政府はこの点も明らかにしていただきたい。しかしカナダ人までもが北朝鮮「支援」に関わっていたとは、北朝鮮を巡るネットワークは非常に広範囲で複雑だと思わざるをえません。言いかえると、北の独裁体制を支えることで利益を得ている勢力が、世界中に存在しているらしいということです。

中国もその筆頭ですが、中国がかつて世界の大帝国としてアジア一帯に君臨していたのは、独裁的な権力に怖れをなして周辺諸国がひれ伏したたからではありません。何よりもその高度な文明、文化に惹かれたからでした。古代にあっては、政治も経済も文化も、現在のように明確には分離されておらず、渾然一体化状態にありましたので、先進的な文明、文化力は経済や政治や軍事の力の強大さと表裏一体のもであったとはいえ、経済力だけで周辺諸国に君臨できるものではなかったことは間違いないはずです。現在の中国政府は、古代の中華帝国の復興を目指しているようですが、経済力と軍事力だけで世界帝国を築くことはほぼ不可能だと思います。仮に、経済力と軍事力だけで世界制覇が可能になっても、それはごく一時的なものとならざるをえないはずです。

かつての中国の大帝国には様々な民族がそれぞれの文化を保持しつつ、総体として非常に豊かで多彩かつ高度な文明、文化を生み出し、日本をはじめ諸国を魅了してきましたが、現在の中国政府は、文化は経済や政治で代替されうるとでも考えているように思われます。中国国民に対してはその方針は受容されても、世界に対しては全く通用しないということにも思いを馳せていただきたい。ハイテク分野での果敢に挑戦する中国の熱気も、政府に回収されることなく、自由に、時に政府を超えるほどの力を持つことが許される日の来ることを祈らずにはいられません。

最後になりましたが、途中で紹介し忘れていました、中国との連携を強めている、イスラエル技術のすごさを証す記事を紹介します。 イスラエル、もう一つの監視ビジネス先進国

SNSでロックを解除しなくても、情報を全て丸裸にする技術です。これはイスラエルの企業を買収した日本企業が商品化したものだとのことですが、米軍と協同で、インフラを攻撃するウイルス「スタクスネット」を開発したイスラエルが、中国で新種のウイルスを協同開発しないことも祈らずにはいられません。