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民主主義の根本矛盾と強さ

2018-09-29「葦の葉ブログ2nd」より転載

想定どおりに安倍総理が3選されましたが、目下の関心はトランプ大統領と北朝鮮、そして内閣改造。総裁選では、不利を承知で出馬した石破氏の心意気は、その政治姿勢は別にして、評価したいと思います。選挙が実施された結果、日本の政治に多少なりとも緊張がもたらされたからです。石破氏は、安倍総理に対する露骨なあてこすりのような、「正直、公正」をスローガンに掲げて総裁選に挑みましたが、安倍総理はこのあてこすりには謙虚に向き合うべきでしょうね。

森友問題は、人間公害籠池夫妻森友文書と財務省で書きましたように、標準価格で売却できない欠陥土地を使った、籠池夫妻による恐喝事件であるというのが事の真相ですが、その効果はなかったとはいえ、安倍総理の昭恵夫人がこの土地売買に力添えしたということは、関連文書にも記載されている紛れもない事実です。昭恵夫人の働きかけが、土地の値下げには全く関係していないことも関連文書を見れば明白ですが、効果がなかったからといって、昭恵夫人の関与の事実が消えるわけではありません。加計学園問題でも同様です。獣医学部の新設のみならず、別の加計学園傘下の大学に対する、高額の補助金までもが交付されていたという事実は、公務員は全体の奉仕者であるという憲法の規定にも、民主主義の根本理念にも違反しているのではないかとの疑惑を招かずにはいません。

新設の獣医学部のみならず、既存の大学でも特例的に高額補助を受けた加計学園には、この疑惑に応える義務があるはずです。安倍政権は、研究者の業績評価の期限を5年としていますので、加計学園は5年後には、特例的に高額補助を受けた大学の事業で、その成果を国民の前に明らかにすべき重大な義務と責任があります。この問題の検証には5年の猶予を与え、加計学園の奮闘、努力を期待したいと思いますが、もしも加計学園が、5年も経てば、誰もこの事件のことは覚えていないだろうと考えて、税金のタダ取りを決め込むのであれば、加計理事長には教育者の資格はなく、即刻傘下の全大学を閉鎖すべきです。5年後には、加計学園のみならず、加計学園を選定した文科省及び選定委員の責任も問われることになるのは言うまでもありません。

加計学園問題は後々にまで尾を引きそうですが、これもひとえに、安倍総理と理事長とが長年の友人であったという個人的関係に由来するわけです。では、公務員は全体の奉仕者であるという、民主主義の理念を体現している政治家はいるのかといえば、皆無だと断言しても間違いはないはずです。これは森友、加計学園問題が残した教訓として再吟味すべき課題であると同時に、民主主義の根幹を改めて問うことにもなる問題です。

民主主義体制には不可欠な選挙は、有権者の様々な利害を背負った複数の候補の中から選ぶというのが鉄則ですが、複数の候補から選ぶという選挙そのものが、選挙の結果誕生した政権が、その支持基盤とする特定の勢力の利益の代弁者にならざるをえないという結果をもたらします。これは政治を担う公務員(議員や官僚)は全体の奉仕者であるという民主主義の理念に反しますが、日本のみならず、世界中の民主主義国家の抱える根本的な矛盾でもあるわけです。この根本的な矛盾を、ある意味非常に正直に、そして露骨きわまりない形で体現しているのが、トランプ大統領です。

アメリカでは、共和党は大企業という強者の利益を代弁し、対する民主党は弱者の利益を代弁するという大まかな支持基盤の違いがありました。ところがトランプ大統領は共和党候補でありながら、民主党からも見放されてきた、最下層の貧困白人層を最強の支持基盤にして誕生しました。そしてこの支持基盤の利益を優先することを公言してはばからないところにトランプ流の特異さがあります。

通常、政権に就くと、支持基盤への配慮はつづけながらも、社会的軋轢を避けるためにそこそこ調和的な政策も実施しますが、トランプ大統領は、社会的軋轢も全く厭わずに自己流を貫いてきました。トランプ流政治が、ほんとうに白人貧困層を救済するものであるのかどうかは別に検討する必要はあるとは思いますが、トランプ大統領は、少なくとも白人貧困層が喝采を送るような政策を続けてきました。トランプ大統領の中国への容赦ない経済制裁もここに端を発しているわけですが、トランプ大統領の誕生は、民主主義の根本矛盾を露骨に体現しつつ、その矛盾がある種の強さにもなっていることを示しています。

矛盾とは言うまでもなく、トランプ大統領は、人種の坩堝、複雑多層な社会構成下にある民主主義の超大国アメリカの大統領でありながら、白人貧困層という特定の集団の利益を代弁してはばかりません。アメリカではそれほど白人貧困層の人口に占める割合が高いということを意味しているわけですが、それにしてもトランプ大統領の偏りぶりは尋常ではなく、公務員は全体の奉仕者であるという民主主義の理念に反しているどころの騒ぎではありません。しかしその一方でトランプ政権は、歴代のアメリカ大統領も含めて、世界の誰もが沈黙を強いられてきた、中国政府のやりたい放題の覇権主義に対しても、遠慮なくズバリその非を指摘しています。

中国は世界の自由主義的経済圏への進出や取引を通じて経済大国化を実現したにもかかわらず、中国に進出した外国企業に対しては自由な経済活動は認めず、様々な規制をかけるという身勝手きわまりない非対照的手法への批判。巨額の融資を使って、中小国の自由と自立を奪い、それらの国々を中国政府の支配下に置く新植民地的手法への批判。台湾に対する陰湿かつ執拗な国家的嫌がらせに対する批判と台湾支援。つい最近は、従軍慰安婦問題で繰り返し執拗に日本に対する非難決議をする国連人権委員会も完全に沈黙している、中国政府のウイグル族に対する、民族浄化を狙った残虐きわまりない弾圧に対しても、トランプ政権は非難声明を発表しました。

これらの中国批判はしごくもっともなものばかりですが、これまではその経済力を恐れて、世界の誰もが沈黙を続けてきたわけです。その沈黙を破ったのがトランプ政権でした。世界の政治的セオリーを完全に無視したトランプ大統領の蛮行によって初めて、中国批判のタブーが破られたわけですが、トランプ流の偏頗さゆえに持ち得た強さだといえるのではないかと思います。しかし、中国を潰すことがアメリカの国益に叶うものなのかどうか、これは大いに疑問です。

Forbes Japanの報道によれば、Appleは、世界のスマホ利益の86%を独占するほどの利益を得ており、「売上ベースでは世界のスマホ市場の51%を占めており、サムスンの約3倍、ファーウェイの約7倍のシェアを誇る。アップルは四半期あたり610億ドル(約6.6兆円)の売上をスマホで生み出している」という。世界のスマホ市場を独占しているアップルのスマホは、中国で組み立てた完成品がアメリカや日本や世界各地に輸出される形になっていますが、本来ならばこれはアメリカから輸出されるべきものであり、アップルスマホにとっては、アメリカに次ぐ巨大市場である日本には、巨額に上るアップルスマホの輸入は中国からではなく、アメリカからの輸入になっていたはずのものでした。

しかし製造は賃金の安い海外に委託というアップルの方針により、日本にもアップル製品は中国からの輸入になり、対米貿易赤字が増える原因の一つになっています。その一方、アップルは「世界のスマホ利益の86%を独占」するほどの利益を上げ、時価総額も100兆円超の世界第1位を占めるに至っています。アップルは製造を委託している中国企業とは比較にならないほどの超巨額の利益を手にしているわけです。

iPhonehは売れてもアメリカ車が売れないのは、アメリカ車は、アップルのような顧客にアピールするような魅力的な製品の開発を怠ってきたからです。それ以外に理由はありません。アップルはアメリカ政府を使って日本に売り込んできたことは一度もありません。アップルは企業努力で顧客が飛びつくような製品開発を続けることで市場を独占するに至ったわけです。

バカでかい上に燃費の悪いアメリカ車を買う物好きは、アメリカ国民以外には存在しないのは理の当然ではありませんか。その上、アメリカ車は日本では宣伝すらしたことはありません。企業努力を全くせずに、アメリカ政府を使って日本などにむりやり買わそうとは、企業として恥ずべきではありませんか。これはアメ車に限らず、衰退を嘆いているアメリカの製造業全体に言えることだと思います。加えて、楽して儲けようと、金融資本主義にシフトし、製造業を軽視してきたアメリカの歴代政権とアメリカ社会の連帯責任でもあるわけです。

アメリカの投資ファンドなどは、日本を含め、世界中でボロ儲けをしてきました。無責任な利益追求の果てに金融破綻、リーマンショック時には、アメリカ政府のみならず、日本も中国もEUも巨額の資金を投じて、アメリカ経済の破綻、すなわち世界経済の破綻を防ぎました。恐慌時には、世界の基本構造が誰の目にも明らかになります。つまりは、現代においては、いずれの国も、単独で存続することは不可能であるという基本構造によって、世界が成り立っているということ。リーマンショックという恐慌が、改めて我々に伝えた教訓です。

しかしトランプ大統領は、貿易赤字はアメリカ自らが招いた結果であるばかりか、アップルなどのアメリカ企業も莫大な利益を得ているにもかかわらず、相手国を一方的に非難し続けています。トランプ大統領は、アップルなどのアメリカ企業が莫大な利益を上げている一方、巨額の貿易赤字をもたらさざるをえないのは、アメリカのいびつな産業構造に起因していることにも目を向けるべきではないか。このいびつな産業構造を放置したまま中国製品を米国から追い出しても、アメリカの製造業の強化には繋がらないはずです。中国ではない第三国からの輸入が増えることになるだけではないか。

米中貿易戦争勃発後、韓国では輸出が増えているという。韓国企業にとって最大の脅威は中国企業です。スマホ市場での市場占有率の変化一つ見ても、中韓の逆転は顕著です。しかし市場での競争では、かつてのように韓国製品が中国製品に圧倒することは不可能であることは誰の目にも明らかです。そんな韓国企業にとっては、最大の市場であるアメリカから大統領の鶴の一声で中国製品が駆逐されるのは、願ってもない僥倖であったはず。

韓国にとっては、まさに漁夫の利ですが、実は1980年代から90年代にかけて続いた日米半導体戦争とまで呼ばれた、半導体を巡る日米貿易摩擦でも、米国への輸出に過大な規制をかけられていた日本の半導体に代わり、韓国製半導体はまさに漁夫の利を得て、アメリカでの半導体市場に一気に食い込み、占有するに至りました。

しかも韓国は、自前で半導体を開発せずに、また金を払って半導体技術を買うこともせず、日韓の政府間交渉で無償で日本の半導体技術を提供してもらうことに成功しましたので、日本製が輸出制限を受けている最高のタイミングを逃さずに、米国半導体市場に進出することに成功したわけです。韓国政府の無責任きわまりない反日ぶりには怒りを覚えますが、半導体に関しては、韓国にとってはおそらく偶然に遭遇したまさに僥倖そのものだったと思います。

時代が変わり、今や韓国は中国企業にも敗北しつつありますが、韓国企業の世界的シンボル、サムスンのスマホまでが凋落しつつある中で、韓国が起死回生策として、アメリカ政府による、「半導体戦争での日本排除」の中国版の再来を熱望していても不思議はありません。むしろ当然でしょう。トランプ大統領が韓国の思惑まで考えているかどうかは分かりませんが、結果としては、対中制裁で韓国は漁夫の利を得ることになるはずです。北朝鮮との融和を進めたいトランプ大統領にとっては、韓国とのFTA交渉では韓国の譲歩も勝ち取ったこともあり、中国の代わりに韓国が伸張してきても容認しているのかもしれません。

その北朝鮮とは2度目の米朝首脳会談が開催される見通しだという。南北首脳会談や米朝首脳会談などでの華々しい報道を通じて、金正恩労働委員長はあたかも稀代のスターでもあるかのようなイメージが広がっています。童顔っぽい、ぽっちゃりとしたかわいい笑顔の金委員長の写真などを見ていると、善良そのものとの印象を受けますが、笑顔の写真は真実を映したものではないという現実にも留意する必要があります。

9月8日の読売新聞に米司法省が、北朝鮮政府が運営するハッカー集団「ラザルス」のメンバーである北朝鮮人のパク・ジンヒョク容疑者をサイバー攻撃に関与したとして、訴追したことを発表したことが報じられていました。パク容疑者は、2014年のソニー・ピクチャーズエンターテインメントの未公開映像が流出したサイバー攻撃に関与したほか、昨年5月に役50カ国に被害が広がった「ランサム(身代金)ウェア」によるウイルス攻撃や、16年にバングラデシュ中央銀行の口座をサイバー攻撃して約8100万ドル(約90億円)を奪った事件にも関与したとされているという。

これまでも、北朝鮮によるサイバー攻撃は繰り返し指摘されましたが、米政府をはじめ正式に訴追されたのは初めてです。北朝鮮は中国のサーバーも借りてサイバー攻撃をしているという記事も見たことがありますが、中国の高性能で強力なサーバーを借りてサイバー攻撃をくり返していた可能性も考えると、北朝鮮によるサイバー攻撃はもっと増えそうです。他にも麻薬の密造と密輸も北の国家犯罪の一つです。現在はどうか不明ですが、かつて北ではニセ札の製造も行われいました。

つまり北朝鮮は、世界規模での犯罪を主たる産業として金一族の独裁を支えてきたわけです。のみならず、自国民を海外に出稼ぎに送り出し、その賃金の大半をピンハネして、金一族の独裁維持の資金としていたわけです。国家犯罪を常態化しなければ、金体制は維持できなかったという事実は、金独裁体制の維持の正当性はどこにもないことを証明しています。

北朝鮮の犯罪国家としての素顔を見れば、国連が延々と北に対して人道支援と称する支援を続けることは、犯罪に加担することを意味していますが、3度目の南北首脳会談後、南北首脳は、国連による支援の必要性を強調するとともに、文大統領は国連のグテレース事務総長にも国連による支援を改めて申し入れていました。北に対する支援を求めるよりも、まず北の強奪被害に遭った国や企業などへの弁済、賠償が先ではありませんか。

南北朝鮮の人々(指導層)は、朝鮮王朝時代からの伝統なのか、自力で立つという気概が非常に乏しい。日本に対しても、まるで日本の義務でもあるかのように、巨額の支援を求めてくるはずです。安倍総理は、小泉訪朝時に約束した以上の支援は絶対するべきではありません。小泉訪朝時には、日本政府は2兆円もの巨額の金を北朝鮮に渡したとの記事を読んだ記憶がありますが、兆単位の金と引き替えに一部の拉致被害者の帰国が実現したというわけです。北朝鮮はまさに誘拐犯そのもの。

われわれは、北朝鮮は犯罪国家であり続けてきたということ、そして今もなおその素性は変わっていないということをしかと認識した上で、北朝鮮を巡る諸問題に対処すべきであることを確認する必要があるのではないか。金委員長は、独裁国家は自力での存続は不可能であり、民主主義国家の支援なしには存続は不可能であるという滑稽さを、しかと認識すべきでしょう。