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アメリカの表と裏

2021年9月28日(ashi-jp.com/3rd/より転載)

管総理が訪米して、バイデン大統領と最後のご対面を果たしたこともあり、今回もアメリカをテーマにしましたが、マスコミでもほとんど報道されない、隠された米中関係が浮き彫りにする、アメリカの「今」に迫ってみたいと思います

米、8万5000人もの中国人留学生にビザ発給

24日、「クアッド」と呼ばれる日米豪印4カ国による直対面式の初の首脳初会談が開かれ、退任間近の管総理もこの会談に参加するために訪米しました。バイデン大統領は、退任する管総理に対して、単なる外交辞令だとは思えぬほどの過分のほめ言葉を贈呈しました。

管総理に限らず、アメリカ政府にとっては日本政府は他に例はないほどの忠実なる下僕であり、かつアメリカに対しては底なしの財布代わりを果たしてくれるので、なくてはならない必須アイテム(主権もないので政府とは呼べない)になっていますので、懐の痛まないリップサービスぐらいお安いものだと思っているのかしれません。

しかし管総理の忠実なる下僕ぶりに対する多少の感謝もあったのかもしれません。前号自立をめぐるアフガンと眞子様・圭氏でもご紹介しましたように、在日米軍基地では、米軍が使用する消化剤に含まれる、基準値の13倍もの有害物質物を垂れ流していました。しかもこれが常態化しているわけです。

なぜ垂れ流すのかといえば、無害化するには巨額の費用がかかるからという単純明快な理由です。経費を節約するために、日本人ががんになろうが死のうが知ったことではないとばかりに、周辺の川に垂れ流し。有毒物は川から田んぼや海へと拡散していきます。水道の水源にも害は及びます。

防衛大臣や総理大臣が在日米軍基地の司令官や米国政府に対して抗議をして、米軍に無害化処理をさせるべきですが、日本政府からの抗議は皆無。それどころか先日、日本政府がこの有毒物を9200万円も投じて肩代わりすることになったという。ついでに、その他の米軍費用も肩代わり
米軍PFAS汚染水、日本が費用負担し処分 格納庫補修費も 再度放出は当面回避 琉球新報

しかもこの処理費用はさらに膨らむ可能性もあるという。有害物の総量は米軍の申告によるもので、実際にはもっと多くなる可能性があるからです。この有害物は米軍が訓練中に放出しているそうなので、沖縄以外の基地でも調査する必要がありますね。モラルの崩壊した米軍が、自由や民主主義という理念のために命をかけて戦うかといえば、それはほぼありえませんね。

しかし管総理は抗議一つせずに、訪米前に、日本の税金を使ってこの米軍の尻ぬぐいをしたわけです。直ご対面の場でもご機嫌をとることはあっても、抗議は御法度。バイデン大統領にとっては、忠実なる管総理にはよしよしという気分なのでしょう。そこで言うだけならタダとばかり、少々過剰なリップサービス。

加えて、総裁選下の日本の政局も踏まえてのリップサービスだったのではないかとも思います。米政府は河野総理の誕生を望んでいるとの、メディアを介した露骨な内政干渉がなされていますが、この米政府の声が総裁選に影響しないはずはありません。

河野氏を背後で支えているのは管総理であることは周知の事実。誰が総理になっても日本政府が米国の忠実なる下僕であることには変わりはないとはいえ、恣意的に税金を使うことに全く抵抗のない管総理を使って、河野新政権をより忠実な米国奉仕内閣に仕立て上げようとの魂胆なのではないかと推測いたします。河野氏は、管総理を真似ているのか、独裁思考をうかがわせる言動を頻発しています。

一方、クアッド重視のバイデン大統領は、原潜建造をめぐって豪仏対立を招き、あわや米仏断交かかという事態にまで発展。結局は双方歩み寄って表立った対立は解消されたようですが、この騒動も米国の今を象徴しているように思います。

米国のクアッドへの急傾斜は、いうまでもなく中国孤立化を狙ったものですが、その一方でバイデン政権は4月末、トランプ大統領以来続いていた中国からの留学生受け入れ禁止を解除する方針を発表しています。

米、中国など外国人留学生の渡航制限緩和 今秋からロイター

それから約4ヶ月後の8月25、在北京米大使館は、5月以降、中国人留学生に発給したビザは8万5000人を超えたと発表したという。

米国、中国人留学生8万5000人にビザ発給 5月以降
毎日新聞 2021/8/25

上記のように、毎日新聞はすぐさまこのニュースを報道していますが、西日本新聞もNHKラジオも報道していないようで、全く知りませんでした。ところが1,2週間前、NHKラジオで簡単ながらこのニュースが流れました。

しかしラジオの一声だけでは詳しい内容が分かりませんのでネットで検索したのですが、このニュースに関しては、上記ご紹介した2社の報道のみで、他は皆無です。1社のロイターはビザ発給が再開されるというお知らせですが、発給後の実績に関する報道はなし。

8万5000人という恐ろしい数の、中国人留学生へのビザ発給を報じたのは、日本の毎日新聞以外には見つかっていません。NHKラジオがかなり遅れてチラッと報道しただけで、検索にかからないところを見ると、本体のテレビでは報道していないようです。

米中対立下にある世界にとっては重大なニュースのはずですが、なぜ隠蔽されるのか。おそらくこのニュースには、目下のアメリカが抱える病巣が隠されているからだろうと思います。一言でいえば、アメリカは中国人留学生の激減により、大きな欠損を抱えることになったということです。以下、箇条書き的に、その事情を列記してみます。

1アメリカの大学は、自国の学生よりも海外からの留学生受け入れに力を入れてきた。(中間層の激減により、自国民の入学者数が減少したこととも関係あり。)
2留学生の大半を中国人留学生が占めていた。⇒ 激減により大きな穴。
3大きな穴の一つが、大学の存続を危うくしかねない経営上の問題。
4さらに大きな穴は、大学や研究機関の研究環境を危うくしかねない研究水準維持の問題。

8万5000人という数字はただごとではありません。留学生が激減して大学経営が難しくなっているだけが理由であれば、中国以外の世界各国から学生を呼び込めばいいわけです。留学先としては世界ダントツ1位の人気を誇るアメリカです。

が、再開後のビザ発給でも中国人留学生がダントツの1位です。中国は留学生を介して、アメリカの研究成果を盗んでいるとして、トランプ政権下では、中国人留学生の排除までなされてきましたが、そのリスクはなくなったのかどうか。あるいは別の事情によるものなのか。

この問題を考えるに当たっては、アメリカの教育事情に目を向ける必要がありそうですが、次の新書には、アメリカの大学事情が紹介されています。

教育現場は困っているー薄っぺらな大人をつくる実学志向」平凡新書

副題にもありますように、基礎的な知識習得には不可欠な詰め込み教育を、一方的に批判する形でなされてきた日本の教育改革を批判した書ですが、そのお手本となったアメリカの教育改革とその結果がもたらした現状についても紹介されています。一言でいえば、日本で起こっている問題が、アメリカではすでに先行的に始まり、深刻化しているということです。

その代表的な問題が、学生の学力低下です。日本でもかなり前から、高校で習得しておくべき知識も身についていない学生がかなりの数大学に入ってきており、そうした学生を対象にした補習授業がなされてきていますが、アメリカでも全く同様だとのこと。

アメリカでは、84%もの大学に治療用再教育(補習教育)科目が設置されているという。アメリカの大学の先生方は、この補習教育に多大な労力と時間が取られていると嘆いているそうですが、大学教育に占める補習授業の割合は日本より高いのではないかと思います。というよりもアメリカでは、高校以下の学校教育そのものが十分に機能していないという現実があります。

アメリカでは州の独立性が高く、州や地域間格差に加え、全米を覆う極度の貧富の格差もあり、地域が担う中等教育、初等教育にはその社会的格差がもろ反映されているからです。アメリカでは、大半の大学で治療用再教育を実施せざるをえないというのも、その必然の結果が大学にまで及んでいることを示しているわけです。

しかし海外からの留学生の場合は、そのほとんどは治療用再教育が不要であるのは明らかです。大学運営上は非常に効率的です。特に、詰め込み教育の非人間性が時には批判されてきた中国からの留学生たちは、基礎的な知識を徹底的にたたき込まれていますので、再教育が不要であるのはもとより、研究水準を維持するに貢献するばかりか、時には水準を高め、リードしてきた側面もあったのではないか。

新自由主義が猛烈な勢いで広がり始めた頃、アメリカでは教育への投資は最小に抑え、優秀な人材を海外から呼べばいいとさかんに喧伝され、日本もその真似をしてきました。しかし、もっとも激烈に貧富の格差、教育格差が生じていたにもかかわらず放置されてきたアメリカでは、その結果ももっとも激烈な形で現れているように思われます。

それが、8万5000人もの中国人留学生へのビザ発給の意味するところではないかと思います。アメリカは中国人の内部浸透を恐れつつも、中国人留学生を受け入れざるをえないというディレンマに陥っているのではないか。

この事実は隠蔽するのではなく、日米両国民に広く知らせるべきだと思います。アメリカの上位の大学には世界中から優秀な学生が集まりますので、大学のレベルも世界一。しかし中が空洞化しつつあるという現実を直視し、迅速に是正策を実施して、実のある国力向上に取り組まなければ、超大国アメリカといえども、やがて中国に呑み込まれてしまう可能性もゼロではありません。

中国人留学生8万5000人にビザを発給した在北京米国大使は、次のように述べています。

「中国からの留学生や研究者は米国の多様性に大きく貢献しており、過去10年間で3倍となった中国人留学生との個人的な結びつきを誇りに思っている」(米国、中国人留学生8万5000人にビザ発給 5月以降)と。

これは外交辞令ではなく、本音に近い言葉だと思います。Appleのティム・クックCEOもオンラインを介した公開の場で、中国の若者に対して同趣旨の呼びかけをしていました。自国の若者に向かってではなく、どちらも中国の若者に向かっての言葉です。

手間暇のかかる治療用再教育の必要な自国の若者よりも、優秀な中国の若者をということですが、教育は国の礎だという真理が、反転した形で示されています。日米の国民は、アメリカが置かれているこの現実をしかと直視すべきだと思います。

一昨日、ファーウェイの副社長が解放されました。これも同じ流れにあることは明らかですが、カナダ人2人も人質になっていましたので、人道的にも解放の選択は不可避だったと思われます。中国政府による強引な人質作戦が功を奏した面もありそうです。こういう駆け引きは日本政府も見習うべきですが、日本政府はアメリカ政府の下僕役しかできません。

クアッドではG6や半導体や宇宙など新規分野での共同研究を進めることが合意されましたが、アメリカの企業がもつ世界最先端の技術がこのメンバー国に開示されることは100%ありえないはず。一方、日本政府はアメリカの歓心を引くために、日本の最先端技術を嬉々として開示するということは起こりそう。

独裁化を強化しつづけている中国に支配されるぐらいなら、アメリカの下僕の方がまだましだとは思うものの、今のアメリカには中国と正面切って対立する力はないということ、そしてアメリカは、表では日本などを巻き込んで対中対立を演出しながら、裏ではひそかに中国と手を結ぶ可能性のあることは、日本政府としてはしかと認識しておくべきだろうと思います。

コロナウイルス製造でも米中協力がなされていましたしね。
コロナ専門家部会解散、武漢研に米資金提供の団体関与 2021 年 9 月 27 日 WSJ

医師でもある共和党の議員がすでに数ヶ月前に、中国での武漢ウイルス研究に米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長が資金提供をしたとの調査報告書を公開していましたが、日本でも、マスコミが全く報道しない中、以下のように、果敢にこの問題を取り上げている機関・人物がいます。

武漢ウイルス研究所流出説、海外で再び広がる…ファウチ所長のメール公開、風向き変わる
独立行政法人産業経済研究所 藤和彦 2021年6月17日

ところで、車の生産を停止せざるをえないほど不足している半導体をめぐっては、自国での生産を目指しているドイツは台湾にまで出向いて、学生などのリクルートに動いていたことが報じられていました。

日本政府は半導体は現有施設以外での生産は全く考えておらず、台湾企業TSMCの誘致に力を入れていますが、「TSMC熊本に進出!」と報じられて間もなく、熊本がまたもや豪雨に襲われました。以降、TSMCの日本進出は立ち消え状態です。これほど異常豪雨に襲われ続ける日本への進出には、TSMCが躊躇しても無理からぬこと。

しかしこの豪雨もタイミングとしては余りにも不可解。昨今の異常気象は、気象予報士的視点ではなく、国防上の視点から率先研究すべきです。

半導体といえば、昨年10月に発生した旭化成の宮崎県延岡工場で発生した火災発生の原因調査書が9月14日に公表されていますが、火災の原因は電気系統に起因するとのこと。TSMCの火災も、首里城の火災も、福島原発で爆発事故の前と後に発生した2回の小規模火災も、全て電気系統からの発生です。単なる偶然なのでしょうか。

火災した工場そのままでは半導体の生産再開は難しそうですが、新工場を建てての再開は可能なはず。蓄積されてきた技術はありますし、流出していなければ人材もいますので、環境が整備されれば再開も可能ではないかと思われますが、政府(菅政権)は支援する考えはなさそうです。なぜ再開支援をしないのか。

この分野は、日本国内も人手不足なので人材が海外に流出することはないとは思うものの、被災した苦境にある日本企業を容赦なく狙う韓国企業に人材が引き抜かれないか心配しています。

その半導体技術者についてのドイツのリクルート先は、日本でもなく、韓国でもないというところに注目すべきでしょう。世界を見回しても、韓国人学生を喜んで採用する企業は日本以外にはいないという現実を、韓国の方々はしかと認識していただきたい。

先進国になった現在でも、自国には働く場がなく、日本での就職を希望する大勢の韓国人学生。それを喜んで受け入れる日本企業。にもかかわらず、今なお徴用工や慰安婦問題で日本を批判し続ける韓国人。恩を知らない、感謝することを知らない人々だとつくづく思いますね。

あらゆるものを日本からタダで譲り受けてきた結果が、現在の韓国の繁栄とともに隘路をも招いているわけです。その隘路とは、自力で新技術の習得や開拓ができないという、致命的な欠陥です。

なお先日、軍政に抵抗を続けるミャンマーの人々を支援するために、ミャンマーの民族楽器の演奏会を現地からの中継されることが、NHKラジオで紹介されていました。ミャンマーの民族楽器のすばらしさに魅了された井口寛さんという方が企画されたそうです。全く無抵抗なアフガンの人々とは違い、ミャンマーの人々は血を流し、命をかけて軍政に抵抗しています。この違いは何に起因しているのでしょうか。

ミャンマーの文化芸術の炎を絶やすな!ミャンマーを応援!